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東京神学大学資産管理についてのご説明

2021年6月15日
学長 芳賀 力

(1)基本理念
 本学はこれまで教育環境の充実と財務基盤強化のため、第3号基本金の充実を図ってきました。第3号基本金から発生する利息収入は毎年学校会計に計上され、本学運営の為に必要な収入の一部となっています。第3号基本金の運用については、資産の保全を第一と心得ており、市況に応じて頻繁に金融取引を行うことはしておらず、現在もその方針に変わりはありません。日銀の低金利政策により、大幅な利息収入を見込むことのできない状態にありますが、基本的には「学校法人東京神学大学資産運用規程」に従い、公共債(国債、地方債)を中心に債券を購入し保持してきました。また金融債の場合には、「信用ある格付機関のいずれかによりA格以上の格付けを得ている銘柄」に限定してきました。

(2)債券買い替えの経緯
a 2016年度、当時日銀による国債買い増しによって国債の時価評価が急激に上昇したのを受け、基金部会で協議の上、キャンパス整備計画の資金に充当する主旨のもと、2016年7月21日に簿価5億4800万円(取得価額5億4800万円)で購入した国債4本を6億7600万円で売却し、1億2800万円の売却益を得ました。この売却益は、2016年度「事業活動収支計算書」の特別収支、事業活動収入の部の科目に、第3号基本金引当特定資産売却差額として記載されています。同時に、売却した6億7600万円のうち、6億円を用いてSMBC日興証券を発行母体とする債券の購入を行いました。
b 国債の売却により1億2800万円の売却益を得ましたが、日銀の低金利政策により、利息収入が売却前と同等の公共債(国債、地方債)が市場になく、運用規程のもとで購入できる債券の選択肢も限られておりました。この買い替えにより、利息収入は年間931万円から、年間567万円に減少しました。
c 2017年度、低金利下にありつつも2016年度国債売却前と同等の利息収入を見込むことのできる公共債(国債、地方債)の提案を証券会社に望んでいましたが、長引く日銀の低金利政策により、利息収入の増加を見込むことのできる公共債(国債、地方債)の提案はなされませんでした。そこで、安全性を重視し、かつ年間運用利息の向上を見込める債券がないかの調査を証券会社に依頼しておりました。その後、日米の金利差が大きくなった影響により、ドイツ銀行ロンドン支店を発行母体とするドル円為替連動型の利率の良い債券が提案されました。そこで基金部会で協議の上、2017年11月28日にSMBC日興証券発行の二つで額面6億円(取得価額6億円)の債券を当時の時価5億1000万円で売却し、同時にドイツ銀行ロンドン支店発行の二つで額面6億円の債券を同額の5億1000万円で購入しました。
d SMBC日興証券発行の債券は満期前であったので額面以下の売却となり、取引時点では9000万円の売却損が発生しましたが、この買い替えにより、利息収入はそれ以後年間567万円から年間1830万円に増加しました。年単位で1300万円弱の利息収入の増加が実現し、既に3年半が経過しています。

(3)行った会計処理について
a 2017年11月28日に売却したSMBC日興証券発行の債券は、円ドル相場で元本毀損リスクが生じる債券ではなく、100%円償還のものです。所有していた債券そのものに元本毀損が起こり、損切りを勧められたから買い替えを行ったのではなく、金利の良い債券に買い替えることが目的で、所有していた債券を取得価額より安く売却したために、9000万円の売却損が生じました。この売却損は、2017年度「事業活動収支計算書」の特別収支、事業活動支出の部の科目に、第3号基本金引当特定資産処分差額として記載されています。購入したドイツ銀行ロンドン支店発行の債券についても、貸借対照表の注記で、その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項として、有価証券の時価情報の総括表および明細表に毎年度記載しています。
b この時、第3号基本金引当特定資産の簿価が9000万円減少したため、別の資金から充当する必要が生じ、2017年3月26日に貯蓄してあった流動資産から4000万円、減価償却引当特定資産から5000万円を繰入れました。なお、ドイツ銀行発行の債券は、償還時に額面通りの額が戻ることを見込んでおります。その際には、9000万円の売却益が発生することとなります。
c 2020年度、寄附者の同意と理事会の決議に基づいて行われた第3号基本金3億8300万円の取り崩しは、処分差額9000万円を補填するために行われたものではなく、すべてキャンパス整備計画に用いられることを目的とし、2020年度の決算書にも注記を行い、理事会で決議を行っています。

(4)会計処理の根拠について
a 2017年11月28日に売却したSMBC日興証券発行の債券は、一部デリバティブ要素を内包した債券(仕組債)ですが、今回の売却および購入は、デリバティブ取引そのものではありません。学校法人としてその売買差額を「資産処分差額」として計上した根拠は以下の規程に従ったものです。

※『【学校法人委員会研究報告第16号】計算書類の注記事項の記載に関するQ&A』
※『デリバティブ取引の会計処理』

Q17 学校法人会計では、デリバティブ取引はどのように会計処理されますか。
A……デリバティブ取引に係わる損失については、「デリバティブ取引の解約に伴う損失(又は利益)」は、事業活動収支計算書の特別収支に該当するとされているため、大科目「その他の特別支出」に区分し、小科目「デリバティブ解約損」等とすることになる。ただし、貸借対照表に計上されている現物の金融商品と組み合わされたデリバティブ取引に係る損失で、当該金融商品に係る売却又は処分差額と区分することが困難な場合を除く。

b 本件の処分差額は、額面6億円(取得価額6億円)の債券を5億1000万円で売却したことにより生じたものです。しかし同時に、同じ額面6億円の債券を5億1000万円で購入しています。直接デリバティブ契約を締結した取引ではなく、デリバティブ要素を内包した債券(仕組債)取引であり、年間運用利息の改善を目的とした、債券取引です。デリバティブ取引そのものに係わる損失と明確に区分することのできない、「当該金融商品に係る売却又は処分差額と区分することが困難」な事例に属します。現在所有しているドイツ銀行債券も仕組債ですが、貸借対照表の注記に有価証券として記載しており、本学公認会計士からも、無限定適正意見の監査報告書を受領しております。

(5)資産管理の見直し
 本学は資産運用規程を見直し、これまでの基金部会に代えて、専門識者を加えた「資産運用管理委員会」を新たに設置致します。今後は、この資産運用管理委員会により、これまで以上に安全かつ慎重な手続きに努めていく所存です。
今後とも本学を変わらずご支援くださいますように、心よりお願い申し上げます。